糖尿病の治療ではどちらの食事療法を選ぶ?「エネルギーコントロール」それとも「緩やかな糖質制限」?〜緩やかな糖質制限編〜

管理栄養士/日本糖尿病療養指導士の高橋美知代です。

前回は、糖尿病専門クリニックである当院で実施している「エネルギーコントロール」と「緩やかな糖質制限」の2種類の食事療法のうち「エネルギーコントロール」についてご説明しました。

本日は「緩やかな糖質制限」についてご紹介して行こうと思いますが…

まずは少し復習を。

エネルギーコントロールは、ご飯、パンそして麺などの主食(糖質の多く含まれる食物)が好きな人に向いています。一方、緩やかな糖質制限は、上記のような食物にそこまで執着のない人に向いています

なぜかと言うと、エネルギーコントロールでは主食量をある程度確保しますが、緩やかな糖質制限ではエネルギーコントロールより主食量を少なくするからです。

 

現在、糖質制限に関しては、専門医の先生方の間でも意見が割れています。

私自身も極端な糖質制限には反対です。なぜなら、ケトアシドーシス(血中にケトン体が過剰になり、酸性に傾いている状態。酷いと意識障害が起きる)を起こしやすくて危険だからです。また、短期的な減量効果は高くても後々リバウンドが起きやすいからです。

DIRECT試験結果によると、「糖質制限群」は最初は減量効果が大きいですが、DIRECT試験追跡調査結果によると6年後にはほぼもとの体重に戻っています。リバウンド体重が最も少なかったのは「地中海食」でした。

「地中海食」は、以下のような特徴がありました。

エネルギー制限。野菜豊富。牛肉やラム肉などの赤身肉を避け、家禽肉や魚に置き替える。脂質エネルギーは35%以下とする。脂質源はオリーブ油30~45gとナッツ一掴み(5~7粒、20g未満)。

 

減量効果が最も高いのは短期的には糖質制限食ですが、長期的には地中海食と考えられます。

 

そこで、当クリニックでは「緩やかな糖質制限」に「地中海食」の特徴(全部ではない)を取り入れた食事療法を実施しています。

緩やかな糖質制限食の基本は、糖質摂取量を1日70〜130gに設定します。朝・昼・夕食で各々 20〜40g間食で10g(場合によっては、朝・昼食を各々50g、夕食と間食を合わせて30gというように設定することもあります)。

緩やかな糖質制限食の詳細は下記の通りです。

・主食:ご飯70g/食(食パン60g/食)
・たんぱく源:手のひらサイズ1~3個分/食


・野菜類:両手いっぱい/食(≧120g/食)

・油脂類:大さじ1~2杯/日
・調味料:糖質≦10g/日

・牛乳・ヨーグルト(無糖):≦200g/日
・果物:≦100g/日(バナナなら≦50g/日)

 

当院の緩やかな糖質制限食の特徴は下記の通りです。

地中海食の特徴を取り入れる(脂質代謝悪化防止のため)
・たんぱく源は肉ばかりでなく大豆製品を積極的に摂取(しかし、牛肉やラム肉などの赤肉摂取を禁止していない)

オリーブ油エゴマ油(アマニ油)などの植物性の油をなるべく使用

・間食ではナッツ炒り大豆をすすめる(手軽に食べられるものとしてSOYJOYもおすすめ)

糖代謝、体重、腹囲などの結果がある程度改善したら、 徐々に糖質摂取量を増やす(リバウンド防止のため)

 

以上が当クリニックで行っている「緩やかな糖質制限」です。

体重、体脂肪率、腹囲、そしてHbA1cが順調に減少し、減量および血糖コントロール改善に有効です。

まだまだ長期にわたる経過観察が必要ではありますが、

食品交換表を使用した食事療法より、患者側にとっても医療者側にとっても実践しやすく、糖尿病食事療法の一つの選択肢として有効と思われます。

ご参考までに。

最後まで読んで頂き有難うございました。

糖尿病の治療ではどちらの食事療法を選ぶ?「エネルギーコントロール」それとも「緩やかな糖質制限」?〜エネルギーコントロール編〜

管理栄養士/日本糖尿病療養指導士の高橋美知代です。

前回は、糖尿病専門クリニックである当院で実施している「エネルギーコントロール」と「緩やかな糖質制限」の2種類の食事療法について簡単にご説明しました。

(参考:糖尿病の治療ではどちらの食事療法を選ぶ?「エネルギーコントロール」それとも「緩やかな糖質制限」?)

 

エネルギーコントロールは、ご飯、パンそして麺などの主食(糖質の多く含まれる食物)が好きな人に向いています。

緩やかな糖質制限はその逆で、上記のような食物にそこまで執着のない人に向いています。

 

本日は、当クリニックで実施している「エネルギーコントロール」での食事療法について紹介したいと思います。

 

エネルギーコントロールは、主治医の設定した摂取エネルギー量をもとに、バランス良くエネルギーを分配していきます。

摂取エネルギーのうち50~60%を炭水化物、20%以下をたんぱく質、残りを脂質(25%以上の場合は植物性油脂の割合を多くする)でとるようにします。

 

そんなこと言われても、何をどのくらい食べたらいいのか全くわからないですよね。

 

そこで、このような疑問を解決するために「糖尿病食事療法のための食品交換表 」というものが存在します。

 

糖尿病食事療法の基本は、それを用いて実施するのですが、
私の場合、それを実際に媒体として用いて食事療法は行なっていません(もちろん、こちらを使って食事療法をやりたい!という人には用います)。

 

「以前通っていた病院の時は、最初のうちは食品交換表を使って頑張っていたんだけど、だんだん面倒くさくなっちゃって…」というような声や、「食品交換表の使い方を教えてもらったけど理解しにくくて…」というような声を患者さんからよく耳にします。

 

そこで私の栄養相談では、糖尿病食事療法のための食品交換表の「考え方」をベースにして、主食、たんぱく源、野菜、油脂類、乳製品、果物、そして調味料などの適量を簡単に理解できるように説明していきます。

設定されるエネルギー量は、標準体重(BMI22 kg/m²)と身体活動量から計算します(BMI=体重kg÷身長m²)。上記の表はあくまでも参考程度ですが、デスクワークなど座って仕事をしていることが多い軽労作の人向けに作成してあります。

 

★食事療法の基本は、主食(ご飯、パン、麺類など)、たんぱく源(肉、魚、卵、大豆製品、チーズなど)、そして野菜の3点セットを毎食そろえ、野菜→たんぱく源→主食の順に食べることです。

 

★主食量はエネルギー量に応じて決めていきます。適量は上記の表を参考にしてください。

ご飯は表の量±20gの範囲であれば宜しいかと思います。

ちなみに、上記の表は炭水化物エネルギー比55%のバランスをベースにしています。

 

★たんぱく源は自分の手のひらサイズで厚さ1㎝くらいが目安になります。

重量にすると、目安は標準体重の数値と同じくらいです。(例:身長165㎝、標準体重約60㎏ → 肉60gくらい)

時々なら150gなどのステーキも食べても良いかと…。

お肉はなるべく脂身の少ないものを選ぶようにします。

脂身が多いと血中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が上昇しやすくなります。

魚はDHAやEPAなどn-3系多価不飽和脂肪酸が豊富に含まれている青魚を積極的にとって欲しいです。

ただし、油が多く含まれているので食べ過ぎはエネルギー摂取過多に繋がるので注意が必要です。

 

★野菜は生なら両手いっぱい、お浸しなどギュッとなっている状態なら片手にこんもり乗るくらいが目安になります(1食あたり120gが目安)。

★油脂類の適量は上記の表を参考にして下さい。

サラダにかけたり、炒め油に使ったりと毎食少しずつとって頂いてもいいですし、揚げ物1食分でとって頂いてもいいです(油、バター、マーガリン、マヨネーズ、クリームチーズも含みます)。

また、ナッツ類15g、アボカド40g、バラ肉20gは油大さじ1弱に相当するので、これらを食べる際には料理で使う油の量を減らして下さい。

 

★牛乳やヨーグルトなどの乳製品は、200〜300ml(g)を目安にするといいです。

食事の中でとって頂いてもいいですし、間食でとって頂いてもいいです。

骨を丈夫にするためにもカルシウムをしっかりとりたいものです。

低脂肪や無脂肪タイプの加工乳やヨーグルトなら300ml(g)、普通の牛乳や全脂タイプのヨーグルトなら200ml(g)くらいが適量です。

 

★果物は1日150〜200g(バナナは100g)とし、1日2回に分けると良いです。

特に、朝食と昼食の食後のデザートとしてとって頂けると良いです。

果物はビタミンやミネラルが豊富でたくさんとった方がいいと思われがちですが、食べ過ぎれば血糖値や中性脂肪が上昇しやすくなるので上記のような量や食べ方がオススメです。

 

★味噌や砂糖などの調味料は使いすぎに注意したいものです。

塩分摂取量を控えるためにも、汁物は1日1回くらいにするのが望ましいです。

味噌汁の味噌は一人分大さじ1/2くらいが適量です(汁150mlに対して)。

濃いめが好きな人は、味噌の量はそのままにして水を減らすと良いです。

野菜やきのこなどたっぷり入れて具だくさん味噌汁にすれば汁が少なくても気にならないと思います。

 

砂糖は糖質ですので、とり過ぎれば血糖値が上昇しやすいです。

1日10g以下には抑えたいものです。

どうしても甘さが欲しいという人は、ラカントを使用するのもいいと思います。

砂糖と同じ量で同じ甘さになり、使いやすい甘味料です。

〜まとめ〜

・主食(量は表を参考)、たんぱく源(手のひらサイズ厚さ1cm)、野菜(生なら両手いっぱい、お浸しなら片手にこんもり乗るくらい)の3点セット

・野菜→たんぱく源→主食の順に食べる

・油脂類は適宜使用(量は表を参考)

・牛乳やヨーグルトは200〜300ml(g)を食事や間食でとる

・果物は150〜200g(バナナは100g)を1日2回にわけて食べる(オススメは朝食と昼食の食後のデザートとしてとること)

・調味料の使いすぎには注意する

 

「エネルギーコントロール」と「緩やかな糖質制限」では、食事療法の特徴が異なるので、同じ食品でも設定する量を変えています。

「緩やかな糖質制限」の食事療法の詳細については、次回以降に紹介していきたいと思います。

最後まで読んで頂き有難うございました。

糖尿病の治療ではどちらの食事療法を選ぶ?「エネルギーコントロール」それとも「緩やかな糖質制限」?

管理栄養士/日本糖尿病療養指導士の高橋美知代です。

私が普段勤務しているところは千葉県の糖尿病専門クリニックですが、東京都に近いので東京から通っている患者さんも多くいらっしゃるようなところです。

糖尿病の他に、脂質異常症、肥満、高血圧症、痛風・高尿酸血症、甲状腺機能亢進症・低下症、腎臓病、そして貧血などに対しての治療を行なっているので、そのような患者さんを対象とした栄養相談を実施しております。

糖尿病の治療がメインですが、糖尿病に他の疾患を合併している患者さんも多くいらっしゃいます。

栄養相談でも糖尿病の食事療法(ダイエット)を基本としながら、それぞれの疾患にも対応する食事療法を行なっております。

 

糖尿病の治療では血糖値だけでなく、中性脂肪やコレステロール、体重、そして血圧などのコントロールも重要です。

食事療法、運動療法が治療の基本で、効果が得られない場合に薬物療法が行われているわけですが、 皆さんは「糖尿病の食事療法」と聞くとどのようなことを想像しますか?

ラーメンを食べてはいけない、肉を食べてはいけない、揚げ物を食べてはいけない、ハンバーガーを食べてはいけない、ケーキを食べてはいけない、アイスを食べてはいけない、お酒を飲んではいけない、夜遅くに飲食してはいけない…などなど。

上記のように、あれも食べてはいけない、これも食べてはいけないと禁止ばかりされるようなことですか?
このように一方的に禁止されることばかりでは、食事療法の継続は難しいかと思います。
(最初のうちは、結果は良くなるでしょうが…)

また、ストレスが溜まるほど我慢して禁止事項を守れたとしても、いつかは我慢できなくなって大爆発してしまうケースがよくみられます。

減量をしている人が途中でリバウンドしてしまうのは、かなり無理をした状態で自分自身を追い込んでしまった結果だと思います(頑張り過ぎてしまったのですね)。

つまり、食事療法を長続きさせるためは、患者さんに無理をさせて精神的・肉体的に追い込むような内容ではいけないということです。

 

そもそも、「食べてはいけない物」というものは存在しません。
(薬に影響する物や、食べたら命を失ってしまう物などは別ですが…)

私の栄養相談では、禁止にするようなことは滅多にありません。

ラーメン、肉、揚げ物、そしてハンバーガーも食べてもらっています(それでも血糖コントロールは改善するし、体重も減少します)。

ただし、どんな物にも「適量」というものがあります。
その「適量」を適切な「時間」や「頻度」で、「食べ合わせ」そして「食べる順序」を気にかけて頂ければ、どんな物を食べてもらっても構わないと私は思っています。

もちろん、甘いお菓子も食べてもらっています。

さすがに、HbA1cが2桁まで上昇している患者さんには、ある程度数値が下がるまで甘い物をひかえてもらってはいますが…
(高血糖の状態をなるべく早めに改善したいため)。

 

当クリニックでは、糖尿病食事療法の基本である「エネルギーコントロール」での食事療法を実施していますが、数年前からは「緩やかな糖質制限」での食事療法も取り入れています。

 

エネルギーコントロールは、ご飯、パンそして麺などの主食(糖質の多く含まれる食物)が好きな人に向いています。なぜかと言うと、主食量をある程度確保できるからです。

 

緩やかな糖質制限はその逆で、上記のような食物にそこまで執着のない人に向いています。なぜかと言うと、エネルギーコントロールに比べて主食量を少なくするからです。

 

私は、どちらの食事療法を選択してもいいと思います。

決してどちらか一つが正解というわけではなく、どちらも正解だからです。

 

そのため、どちらの食事療法を実施するかは、患者さんと相談して決めています(事前に記入してもらった食習慣アンケートや食事記録を参考にして)。

私ができるのはアドバイスと応援で、食事療法を実際にやるのは患者さん自身ですから…。

 

「エネルギーコントロール」と「緩やかな糖質制限」では、食事療法の特徴が異なるので、設定する食品の量を変えています。

共通していることは「ベジファースト」で、下記のような順序で料理を食べることです。

野菜→たんぱく源→主食

最初に野菜、きのこ、海藻、こんにゃくなど、次に肉、魚介、卵、大豆製品、チーズなど、そして最後にご飯、パン、麺、芋、南瓜、トウモロコシなど糖質を多く含む食品を食べることを推奨しております。

 

この「ベジファースト」を取り入れるだけでも、血糖コントロールが改善しやすいです(食後高血糖を抑制してくれるため)。

 

食事療法を何から取り組んで良いかわからないという人は、まずは「ベジファースト」から実践してみてはいかがでしょうか。

 

「エネルギーコントロール」と「緩やかな糖質制限」それぞれの食事療法の詳細については、次回以降に紹介していきたいと思います。

最後まで読んで頂き有難うございました。